公正な賃金制度
社員の賃金を決める上で考慮しなければならないことが3つあります。
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利益の適正配分
賃金は個々の社員の「仕事の内容」「仕事の成果・業績」「会社への貢献度」などに応じて支払う。 -
コスト
賃金はコストであり、その他に社会保険制度や福利厚生費等も含めて人件費の総額を管理する。(労働分配率) -
世間相場
世間相場並みの賃金を維持する。
賃金は労働提供の対価でありますから、「仕事の内容」を反映したものでなければ意味がありません。又、「仕事の成果・業績」を反映させ、納得感のある公正な賃金であることが求められます。更に、社員とその家族の生活を支えるという賃金の側面を考慮して各種手当を設け、社員の生活をバックアップすることも必要です。
賃金を大きく分けると、毎月支払われる「給与」と、年間定期的に支払われる「賞与」の2つに分かれます。給与の体系は「基本給+諸手当」が一般的であり、賞与はその「基本給に支給率を乗じて」算出されます。
給与(基本給+諸手当)と賞与の制度を設計する上でのポイントをご説明致します。
基本給の設計
基本給は賃金の基本であり、基本給をどのような構成で決めるかが、賃金制度で最も重要となります。基本給の構成は、「職能給」「職務給」「業績給」「年齢給」から成るのが一般的です。
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職能給
社員の能力に応じて決定されます。
社員の職務遂行能力に応じていくつかの「職能等級」(8~10程度)を作ります。
人事考課の結果に基づいて、各社員の「職能等級」を決めることにより金額が決定されます。 -
職務給
社員が従事する職務に応じて決定されます。
職務の内容、難易度、熟練度や労働条件などを反映させて決められます。
基本的には同じ仕事をした場合、社員の能力に関わらず、同じ金額になることになります。 -
業績給
社員の達成した成果や業績に応じて決定されます。
社員の売上高や生産高、目標の達成度などを評価して決定されます。
個人の業績や成果が把握しやすい職種に特に向いています。 -
年齢給
社員の生活保障的な役割が強く、社員の必要生活費を考慮して決定されます。
最近は、年齢給自体を採用しないケースや年齢給の上限を35歳位(以前は45歳位)に設定し、年齢給の上昇を早めにストップさせる企業が増えています。
諸手当の設計
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役職手当(役付手当)
役職手当とは、管理・監督の地位にある者に対して支給される手当です。具体的には、部長手当、課長手当、主任手当などがあります。管理職の場合は残業手当に代わる手当としての意味合いが強く、基本給の10~20%くらいが目安となります。 -
家族手当
家族手当とは、扶養家族を有する社員に対して支給される手当です。通常、扶養家族の構成により金額を決めます。配偶者・子・父母等に区分して金額を決め支給するのが一般的です。 -
資格手当・技術手当
資格手当とは、職務に役立つ有益な資格を取得した者に支給する手当です。資格取得を奨励したいのであれば、手当ではなく一時金を支給する方法もあります。 -
通勤手当
通勤手当とは、通勤にかかる交通費相当額の一部または全部を支給する手当です。支給額の上限は課税上の免税額までとする企業が一般的です。
賞与の設計
最近は利益配分・成果配分という意味合いが強くなってきています。
また、毎月の給与は社員の生活を保障するという観点から「大幅に上げたり、下げたりすることがしにくく、社員の能力や業績をストレートに反映できない。」という面があります。
しかし、賞与は毎月の給与ほど制約はなく変動性があり、人事考課の結果を処遇へ反映させる上で、今後ますます賞与の重要性は高まっていくものと考えられます。
多くの企業では、賞与の額を「基本給×○.○○ヶ月」として定め、人事考課の結果を反映させて±20%ぐらいの範囲内で調整を図っていることが多いようです。
賞与の支給額を決定する上でまず考えなければならないのは、賞与としてどれ位社員に還元できるのか、いわゆる「賞与原資総額」の算出と人事考課の結果を反映して出された社員個々の賞与金額の総額(「査定上の賞与総額」)に差が生じた場合、それをどう調整するかということです。
考え方として2つの方法があります。1つは「賞与原資総額」を「査定上の賞与総額」で除して「調整係数」を算出し、すべての社員の「査定上の賞与額」にこの「調整係数」を掛けて支給額とする方法。
方法1.「調整係数」をすべての社員に掛ける
賞与評価表
評価結果 | S | A | C | D | E | F | G |
---|---|---|---|---|---|---|---|
支給月数 | 3.00 | 2.50 | 2.30 | 2.10 | 2.00 | 1.70 | 1.50 |
基本給 | 評価 | 支給月数 | 査定上の賞与額 | 調整係数 | 賞与支給額 | |
---|---|---|---|---|---|---|
総額 | 5,251,000 | 4,999,000 | ||||
Aさん(営業) | 200,000 | C | 2.30 | 460,000 | 0.95220 | 438,000 |
Bさん(製造) | 220,000 | F | 1.70 | 374,000 | 0.95220 | 356,000 |
Cさん(総務) | 230,000 | E | 2.00 | 460,000 | 0.95220 | 438,000 |
Dさん(営業) | 240,000 | D | 2.10 | 504,000 | 0.95220 | 480,000 |
Eさん(製造) | 280,000 | S | 3.00 | 840,000 | 0.95220 | 800,000 |
Fさん(総務) | 290,000 | F | 1.70 | 493,000 | 0.95220 | 469,000 |
Gさん(営業) | 300,000 | C | 2.30 | 690,000 | 0.95220 | 657,000 |
Hさん(製造) | 340,000 | E | 2.00 | 680,000 | 0.95220 | 647,000 |
I さん(製造) | 300,000 | A | 2.50 | 750,000 | 0.95220 | 714,000 |
もう1つはその期の各部門の会社業績への貢献度合いを評価(相対評価)し、部門ごとに「調整係数」を付与する方法です。
方法2.部門ごとに「調整係数」を付与する
基本給 | 評価 | 支給月数 | 査定上の賞与額 | 調整係数 | 賞与支給額 | |
---|---|---|---|---|---|---|
総額 | 5,251,000 | 4,998,000 | ||||
Aさん(営業) | 200,000 | C | 2.30 | 460,000 | 1.00 | 438,000 |
Bさん(製造) | 220,000 | F | 1.70 | 374,000 | 0.94 | 356,000 |
Cさん(総務) | 230,000 | E | 2.00 | 460,000 | 0.90 | 438,000 |
Dさん(営業) | 240,000 | D | 2.10 | 504,000 | 1.00 | 480,000 |
Eさん(製造) | 280,000 | S | 3.00 | 840,000 | 0.94 | 800,000 |
Fさん(総務) | 290,000 | F | 1.70 | 493,000 | 0.90 | 469,000 |
Gさん(営業) | 300,000 | C | 2.30 | 690,000 | 1.00 | 657,000 |
Hさん(製造) | 340,000 | E | 2.00 | 680,000 | 0.94 | 647,000 |
I さん(製造) | 300,000 | A | 2.50 | 750,000 | 0.94 | 714,000 |